敷地内に仕掛けられた見えないスピーカー2

間違いない。ここまでの話を聞いて小生は確信した。鈴木さん(仮名)は何がきっかけになったのかはわからないが、人間不信に陥っているのだ。それがひどくなり周囲で聞こえる自然の音、春のカエル、夏の蝉、空の鈴虫が全て自分に対しての嫌がらせに感じるようになったのだ。警察に言っても相手にされないのは当たり前。周りの人も変人・貴人の類と思って相手にしなくなる。家族はいない(本当にいないのか近くにいないだけなのかはよくわからない)し信じられる人はいない。そこで電話で相談してきた、というわけだ。

しかし、これははっきり言ってノイローゼに近いものなので解決するには時間をかけて鈴木さん(仮名)の心のケアをするしかない。後日別な者が鈴木さん(仮名)宅を調べにいったのだが、家の中や周辺に怪しい機械やスピーカーの類は見つからず、ごく普通の環境である事もわかった。嫌がらせ、というのは鈴木さん(仮名)の心が生み出した幻想なのだ。

さらに、鈴木さん(仮名)の人間不信はすさまじく、調べに行った者に対しては何もいわなかったようだが、後日こちらに電話があった際に「調べにきた人間がうちに何かを仕掛けていった。」などと文句を付け出したのだ。これはもうこちらではどうしようもない。

 こういうノイローゼ気味の人、というのは世の中に結構多いものだ。何かをキッカケに、周囲の人全てが自分に対し敵意をもっているように感じられてしまうのだろう。中には本当に被害にあっている人(つまりノイローゼではない人)もいるがごく僅かだ。人の心の病、というのはなかなか難しいものである。

次回(いつになるかは未定)は『天井から聞こえる音』。