天井から聞こえる音1

ある日、突然の訪問者が。50歳ぐらいの上品な婦人に、大学生ぐらいであろうか、化粧っ気のない素朴な感じのする、それいてかわいらしい若い女性の2人連れ。顔の感じはあまりにていないようだがおそらく親子であろう。ここでは田中さん(仮名)と呼ぶことにしよう。

小生以下“小”「どのようなご用件でしょうか」

田中さん(仮名)の母以下母「実は相談したいことがありまして。」

おそらく娘さんがストーカーか何かにまとわりつかれているのだろう。そのことを気に病んで相談しにきたのだろう。そう思って話を聞くと。

母「いまマンションに住んでいるんです。新築で入居してもう7年ほど経つんですが、最近天井から妙な物音がするんです」

小「どんな音でしょう」

母「何かが天井を走り回るような音だったり、ガンガンという何かを叩くような音だったり。最初はそれほど大きい音ではなかったんですけど、最近はものすごい音がするようになりました。しょっちゅう音が出るわけではなく、突然物音がするんですけど時間はまちまちなんです。夜中に音がするときもあり、あまりにもすごい音で眠れないときがあるんです」

そう話す母親の横で娘さんがうなずいているところを見ると、よくあるような母親だけが聞こえる音というわけではなさそうだ。しかし、娘さんに比べて母親はやや疲れたような感じ。どうやら母親のほうがこの音でノイローゼになっているようだ。
ただ、ノイローゼになっているのはどうも“音”だけではなさそうだ。

母「それで、気になるのは誰かが嫌がらせをしているんではないか、誰かが天井裏に忍び込んで盗聴器を仕掛けているんじゃないかと心配しているんです。」

これが母親の心配事だったのだ。天井から聞こえる音の中に足音のような音が聞こえるのだろう。それで、誰かか忍び込んで何かをしているんじゃないか、と思ったのだろう。しかし・・・。

小「マンションの何階に住んでらっしゃるんです」

母「7階で最上階です。」

聞いて見ると屋上はあるものの普段は人が入れないようになっており、音が鳴り出してから気になって管理人さんに頼んで屋上を調べたそうだが、人のいたような形跡も音を出すようなものも何もなかったそうだ。

音が出る、というのは娘さんも証言していることから間違いはないのだが、問題は母親が悩んでいる盗聴されているのでは?ということについてだ。